処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜
第10章
 そして私達4人は、今日の夜にひっそりと水鏡でローティカの街に向かう事が決まった。
 一度リークの家に戻り、荷造りをしているとあっという間に夕方が来る。

「晩御飯何にしましょうかね」
「…サンドイッチにするか。持ち運び出来るように」
「そうね」
  
 野菜とリンゴジャム、卵のサンドイッチを手早く作り、胃の中に放り込む。
 いつもと違い、味わいを楽しむ間はあまり無かったが、それでもサンドイッチの味は格別だ。

(卵はまろやかで、野菜はしゃきっとしてる。リンゴジャムも甘くて美味しい)
 
 特に卵サンドは、コショウとすり潰した茹で卵とマヨネーズの味が上手く混ざり合っている。

「美味しいわね」
「…ありがとう」
「やっぱり、リークの作ったご飯を食べている時が一番落ち着けるわ」

 つい、口から本音がこぼれた。

「ありがとう、ナターシャ」
「いえいえ」
「もっとゆっくり、ナターシャと一緒に料理を作れたら良いな」
「そうね…」

 サンドイッチを食べ終え、荷造りの最終チェックを済ませると家を出る。リークの家の前には、既にメイルとマッシュがリュックサックを背負って待っていてくれた。

「おまたせしました…!」 
「大丈夫よ、さっき出たばかりだから。じゃあ…行きましょう」

 メイルは2棟の家を魔法でミニチュアにし、更に地面に即席の水鏡を作る。

「さあ、行きましょう」

 私の脳内には、短いながらも魅力的な、ザナドゥの町の思い出が、走馬灯のように流れ出す。
 しかし、ザナドゥの町の裏にあったものを知ってしまったからには、彼らとは協力出来ない事にはもう居られない。

「…」

 私は、水鏡へ足を踏み出した。

「っ…」

 到着した先は、ローティカの郊外にあたる箇所。よく買い物に訪れていたアパルトマンが立ち並ぶ街とは違い、まさに田舎と言った具合だ。
 カンテラで、左腕の方角を照らすと、アパルトマンが立ち並ぶ街並へ続く道が見えた。
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