迷宮階段
いや、でも。担任の矢沢先生は最近私によく注意をしてくるようになったなら、やっぱり気をつけないといけない。
小言を言うお母さんがいなくなった代わりに学校での目が厳しくなっているのだ。それはすべて自分の生活態度が変化したせいだとわかっていたけれど、納得できなかった。
「真美ちゃん。あのさ……最近歯磨きしてる?」
涼子が言いにくそうに声を小さくして聞いていた。
「え?」
「いや、してると思うんだけど、ほら……ちょっと匂いが」
そう言われて慌てて自分の手で口を覆って息を確かめてみる。少し、匂うかもしれない。
毎日コンビニで朝食を買って食べて、そのまま登校してきているからだ。今度からは歯ブラシを持って来て学校で歯磨きしないといけない。
面倒事がまた増えてチッと小さく舌打ちをする。前まではこんなこと絶対になかったのに。
そんな風に考えてすぐに左右に首を振って過去の思い出をかき消した。あんな口うるさい家族に戻るくらいなら、多少面倒でも今の方がずっといい。
私は何でも手に入れることができるし、どこまでも自由なんだから。いつしか私は自分自身にそう言い聞かせていたのだった。
小言を言うお母さんがいなくなった代わりに学校での目が厳しくなっているのだ。それはすべて自分の生活態度が変化したせいだとわかっていたけれど、納得できなかった。
「真美ちゃん。あのさ……最近歯磨きしてる?」
涼子が言いにくそうに声を小さくして聞いていた。
「え?」
「いや、してると思うんだけど、ほら……ちょっと匂いが」
そう言われて慌てて自分の手で口を覆って息を確かめてみる。少し、匂うかもしれない。
毎日コンビニで朝食を買って食べて、そのまま登校してきているからだ。今度からは歯ブラシを持って来て学校で歯磨きしないといけない。
面倒事がまた増えてチッと小さく舌打ちをする。前まではこんなこと絶対になかったのに。
そんな風に考えてすぐに左右に首を振って過去の思い出をかき消した。あんな口うるさい家族に戻るくらいなら、多少面倒でも今の方がずっといい。
私は何でも手に入れることができるし、どこまでも自由なんだから。いつしか私は自分自身にそう言い聞かせていたのだった。