起きられないモーニングコール、眠れない夜カフェ。
「あの……ごめんなさい。また、後ほどお礼に伺っても良いですか……?」

 寛いだ様子の彼の背後にある時計の針の位置を何気なく見て、私は自分の顔が顔が青ざめていくのを感じた。

 ……なんてこと。今日は大事なプレゼンがある出社の日なのに、会議の時間まであと二時間もない。

 飲み過ぎて眠ってしまっていたところを助けてくれたイケメンとこんな風に悠長に話している時間なんて、私にはどこにもなかった。

「ああ……ごめん。今日って、平日だったね。起こしてあげたら良かった。良いよ良いよ。その代わり、またカフェに来てよ」

「ありがとうございます! 必ずお礼に伺います!」

 私は慌てて棺桶の中からすっくと立ち上がり、にこにこと微笑む彼の差し出した荷物を手に取って部屋を出た。

 自分の家へと走っている間に一度部屋に帰ってから、シャワーを浴びて出社するまでの時間を計算して、絶望的な気持ちになりながらも懸命に道を走った。
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