起きられないモーニングコール、眠れない夜カフェ。
 こうして棺桶の中で寝ているってことは、私は自室に居ると思い込んでいた。

 だって……棺桶が部屋にあるなんて、日本でもそんなにないと思うし……必要ないでしょ。普通なら。

 そう。普通なら、だけど。

「……え?」

「おはよ……起きた? びっくりしたよ」

 思わず漏れた声に返事がして私が振り向けば、そこに座っていたのは別に知らない顔でもなくて、行きつけの近所のカフェの店員だった。

 そのカフェはカフェと言っても、夜専門の夜カフェ。

 十八時から早朝まで空いている珍しいカフェで、もうご飯作りたくないとか、飲みの後ですぐに家には帰りたくない気分の時とか……何もする気にも起きない、まったりしたい時に私は使っている。

 彼はダブリエ姿もいかしたイケメンの店員さんだとこっそり注目していた人で……少しだけ喋ったことがあるのは、事前会計だからレジで注文した時と時間の掛かる料理をサーブして来た時くらい。
< 6 / 33 >

この作品をシェア

pagetop