溺れるように愛して
わたしをあの場から外して、今頃ふたりは何を話しているんだろう。

あの女性は一体どうして夏目くんに会いに来たんだろう。

もしかして、家にあげて二人で話しているのかも。それ以上の事も。


「っ」


考えるだけ無駄だと分かっていながら、ネガティブな思考に陥った今、そんな事ばかりが浮かぶ。

邪魔者。

やっぱりわたしは邪魔な存在でしかないだろうか。

人気者と恋に落ちるような、彼氏彼女になれるような、そんな結末など用意されていないのか。


「……本の世界だったら、ハッピーエンドだったのかなぁ」


苦しくて、もどかしくて、進めそうだと思ったら進めなくて、

こんなのが恋なんて、わたしは夏目くんを好きになるまで知らなかった。

楽しいことばかりだと思っていた。

そんなはず―――ないのに。

好きになんて、なるんじゃなかった。

恋なんて、するんじゃなかった。


夏目くんを好きになったわたしは、きっと本の世界では叩かれ終わるような、脇役でしかなかったんだ。
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