月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 布団の中だからか、周りが紅くんのいい匂いで満ちていた。

 もっと近づきたくて、紅くんの腕に抱きついた。



「いっしょにねるとあったかいね」

「そうだね」



 紅くんはされるがままに私を受け入れてくれる。

 前の冬にお母さんに寒いから一緒に寝て欲しいって言ったけど、もう赤ちゃんじゃないからと断られた。

 だからもしかしたら紅くんにも同じことを言われたらと思い、少し躊躇した。もちろん杞憂だったけどね。

 紅くんといると私はどんどん甘えん坊になっていく。

 私が子どもらしくいられるのはここだけだ。

 無性に胸がきゅうっと締め付けられた。



「紅くんいつもありがとう。だいすき!」



 生まれて初めて人を好きだと思った。

 これが恋なのかそうじゃないのかは重要じゃない。

 好きと思えたことに意味があった。



「・・・俺も好きだよ」



 紅くんは私を頭を撫でながら「好き」と言ってくれた。

 人に好きだと告げられたのも初めてだ。

 私の好きな人も私のことが好きで、その人が今目の前にいて、甘やかしてくれている。

 この幸せな時間が永遠に続きますようにと、希った。
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