月ノ蝶、赤縄を結ぶ

「それなら自分で直接連絡したらどう?わざわざ話しかけてこないでよ」

「怒られるから嫌だわ」

「私も嫌」



 このまま話しててもずっと平行線だと思い、会話を切り上げた。

 そうでもしないとまた女子からの怖い怖い呼び出しをくらうことになる。

 私が女子に僻まれる理由は、女子人気が高い鈴木真那がよく話しかけてくるから。

 彼とは私が中学2年生の頃に養護施設で出会った。

 家族が事件に巻き込まれ天涯孤独の身になりやってきたという。

 同じ施設で暮らしている子の中で同い年は私だけだったので、それから何かと絡んでくる。

 私としてはいい迷惑以外の何物でもない。

 ちなみに何でフルネーム呼びかと言うと、鈴木だと苗字被りがいてややこしいし、真那だと馴れ馴れしいから。

 月詠とか胡蝶のようにそうそう被らない苗字だったらよかったのに。

 心の中で文句を言いながら廊下を歩いていると、後ろから呼び止められた。



「ねぇ胡蝶さん。今日の放課後ちょっといい?」



 わぁまた来た。
< 59 / 278 >

この作品をシェア

pagetop