月ノ蝶、赤縄を結ぶ
 今度は一回では終わらず、短いキスを何度も繰り返される。

 息を吸うタイミングが分からなくて、キスの合間に「あ、うぅ」みたいな吐息が漏れて恥ずかしい。


 私の息が切れるまで堪能した後、目を細めながら耳元で囁いた。



「茜は食べちゃいたいぐらい可愛いね」

「えっ」



 食べたいって・・・それって・・・。



 言葉の真意を理解した途端、首まで赤くなるのが自分でも分かった。

 でも何て応えたらいいのかは分からなくて混乱していると、紅くんが頬をそっと撫でてくれた。



「安心して、茜がいいよって言うまでは最後までしないよ」



 さ、最後まで・・・。



「安心して」って言われたけど、寧ろ追い詰められた気がする。

 だって私のたった一言で紅くんと"そういうこと"ができるって知ってしまったから。

 私の16歳の誕生日は、大好きな人と再会し、大好きな人に甘い衝撃発言をされるという形で幕を下ろした。
< 98 / 278 >

この作品をシェア

pagetop