悪魔と涙と甘い恋。

あたしが診察室に入る前に、会計で呼ばれてたお姉さん。

すごく綺麗だったからつい見てしまったんだ。



「これ、落としましたよ」


そう言って目の前に差し出されたのは、小さな太陽マークがプリントされたハンカチ。



「え、あっ……」


笑ってる太陽はどこからどう見ても今日、あたしがカバンに入れた物で。

カバンの中を探してもそれはどこにもなかった。



「あ、ありがとうございますっ!」


慌てて頭を下げると、お姉さんがふふっと笑った。


「可愛いハンカチね」

「こ、これ、あたしの憧れなんですっ……!」

「憧れ?」

「はいっ、太陽が笑ってるじゃないですか、あたしも太陽みたいに温かくなって、誰かを笑顔にさせたいなって……」



可愛くて、一瞬で胸が温かくなって。

一目惚れして買ったんだ。


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