悪魔と涙と甘い恋。

けじめと選択


♢side 神楽♢



───遡る事数時間前。



組長命令で今日1日は絶対安静を食らった俺は、暇を持て余していた。



「……」


ベッドの上で腰を下ろし、吐いたため息が無音な部屋へと消えていく。



羽瑠は俺の事が好きだ。

俺といる時は甘い香りを漂わせ、少しでも意識をすれば匂いが強くなる。


ずっと気付かないフリをしていた。



もう、無理なんだ。



この手で……羽瑠に触れてしまった。



組長との約束は、ヒートの時だけだったのに。




「……」


やる事は1つだけ。



俺は自室を出て組長の部屋に向かった。



その途中で柊が中庭にいるのを見つけ、縁側が続く範囲まで近付く。


「今日掃除当番?」


タオルを首に巻いた柊は、額から汗を流しながら俺を睨んだ。


「見ればわかるでしょ」


< 377 / 487 >

この作品をシェア

pagetop