悪魔と涙と甘い恋。

それぞれの思い


ゴロンと寝返りを打って襖の方をぼんやりと見つめる。



『すぐそこにいるから。何かあったら呼べよ』


目が覚めたあたしに、神楽さんはそう言って部屋を出た。



「……」


抑制剤が効いて今はそんなに苦しくない。


今、何時なんだろ……。


なんとなく手を上に伸ばしてみて、シェードのカーテンから漏れる光と遊ぶ。




明日も薬飲まなきゃ……。


そんなことを考えながらソッと首に触れる。


神楽さんとあんなことしちゃうなんて……。


たくさんキスされて優しく触れるのに……唇にキスはしてこなかった。

それはきっと、神楽さんの優しさ。


前髪の隙間から不意に重なる視線とか、大きくて骨張ってるけど綺麗な指先とか。


あの時のことを思い出すと身体中が熱くなって。

ドキドキと早くなる鼓動に、キュッと自分自身の肩を抱きしめた。


< 87 / 487 >

この作品をシェア

pagetop