籠の中の鳥 〜囚われの姫と副総長〜
もしわたしがあの薬を飲んで異変が起きたら、風邪薬と偽った毒薬だということが十座にバレて、その報復にお兄ちゃんに危険が及ぶ。

だから玲はそうならないように、わたしのかわりに自らあの薬を飲み、異変を感じても十座に悟られないようにあの場では平然と振る舞っていたのだった。


本来であれば、すぐに吐き戻したいほどの苦みの薬を飲み干し、体が痺れてもそれを隠して。


「…なんで、そんな無茶なことを。場合によっては、あの薬のせいで玲が死んじゃってたかもしれないのに…!」


十座に危害を加えようとして、あと一歩のところで玲に止められた憤り。

そして、自分のせいで玲が被害を受けたという罪悪感。


そんな2つの異なる感情が入り交じり、気づいたらわたしは玲に当たり散らしていた。

すべては、恨みのあまり我を忘れ、無計画のまま行動に移そうとしたわたしが悪いというのに。
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