背伸びして、君とありったけのキスがしたい。




綾人さんのことはなんでも知りたいはずなのに、今はこれ以上聞いていたくなかった。


彼の過去を聞いて受け止めるだけの準備が、まだできていないから?

それとも、今はまだ聞くべきタイミングではないから?



だけど、どっちでもいい。過去は過去だ。

私は今の綾人さんと出会って、今の彼を好きになったんだから。



「心配してくれてありがとう、橋本くん」


「あ、いや」


「でも私、今のところ綾人さんに何もひどいことはされてないんだ」


「……」


「むしろ良い思い出しかないから、だから大丈夫だよ」




私は自分の目で見たものだけを信じたい。

綾人さんは自分でさえ『俺はそんなに良い大人じゃない』と言っていた。



だけど私は実際にそんな綾人さんに何度も助けられて、救われてきている。

今はその事実だけで、十分だ。




「綺良ちゃんが待ってるから、私もう行くね」


「あ、待って里緒!俺とまた……話してくれる?」


「……」


「俺、里緒にちゃんと償いたいっていうか」


「友達でいよう、橋本くん」


「……いいの?」


「もちろん。同じクラスだし、これからたくさん行事もあるでしょ?一緒に盛り上げていこうね」




それだけ言って、私は早足に綺良ちゃんの元へ戻った。

こうして前向きな気持ちになれたのも、全部綾人さんのおかげだ。




私は綾人さんが好き。

「(好きって気持ちは、すごいな)」



今、なんだか無性に彼に会いたくなった。






< 54 / 54 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

【1話だけ大賞用】冴えなかった元彼が、王子様になって帰ってきた。

総文字数/10,109

恋愛(オフィスラブ)1ページ

スターツ出版小説投稿サイト合同企画「第2回1話だけ大賞」ベリーズカフェ会場エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 一方的に婚約破棄され、 路頭に迷っていたときに再会したのは 高校時代にできたはじめての彼氏だった。 自分から告白してきたというのに、 恥ずかしがり屋で、手を繋ぐことさえできなくて 緊張のあまり顔すらまともに 合わせることができなかった冴えない元彼が、 転職先の社内で『王子様』と呼ばれる大変身を遂げ 再び彼女を振り向かせようと躍起になる──……。 「わ、私……! もう恋愛はしないって、決めてるから」 二年付き合った婚約者から あり得ない理由で婚約破棄された 人生ドン底真っ最中 *奥畑 悠里(29歳)* × 「俺ね、本当は全然王子様なんかじゃないよ」 「それは悠里ちゃんが一番よく知っているでしょ?」 「ただ君にもう一度振り向いて欲しくて必死なだけ」 一生分の勇気を振り絞って悠里に告白したものの 当時初めての彼女で何をどうしていいか分からず そのまま別れたことをずっと後悔していた 大企業の経営企画部所属 花形出世街道を進む若きエース(王子) *丹波 理人(29歳)* 高校時代にうまくいかなかった 元恋人同士の二人が 大人になって再会すると──? ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
顔も知らない結婚相手に、ずっと溺愛されていました。

総文字数/27,085

恋愛(キケン・ダーク)35ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
父の言いなりになるのが嫌で、 初めて反抗して家を出たとき。 たまたま出会ったあなたに 私は恋をしてしまいました。 「私、今まで何も経験してこなかったんです」 「じゃあさ、俺とこれからいろんなことしていこ?」 けれど、私には父が勝手に決めた 顔も知らない名ばかりの婚約者がいて そして彼にも、同じように婚約者がいる──。
結婚なんて、ゼッタイお断り!

総文字数/66,688

恋愛(キケン・ダーク)135ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
中学校卒業までの三年間の間に、 私は『婚約候補者』と呼ばれる彼らの中から 一人を選んで、結婚しなくちゃいけないらしい。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - ◇◆大安寺 美桜(13歳)◆◇ 裏の世界を支配する大きな組織の組長の孫 & ◆◇遊佐 伊織(14歳)◇◆ 小さい頃から美桜を守れと言われて育ってきた & ◆◇澄田 大和(14歳)◇◆ 父が大安寺組の若頭 大安寺組の組長の座を狙っている & ◆◇日比野 陽太(13歳)◇◆ 普段は可愛い系ワンコ系 でも実はドSな二面性男子 & ○●稲瀬 玲央(15歳)○● 稲瀬組の組長の孫 大安寺組とは敵同士 でも、美桜のことを狙っている……? - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - この大きな街一帯の、 裏の世界の支配する『大安寺組』という組織。 私のおじいちゃんは、 その組織の中でトップに君臨している。 小学校一年生のとき、 両親を亡くした私を育ててくれたおじいちゃん。 そんなおじいちゃんが、私に課した一つの命令。 〝「お前がこれから通う中学、 『私立城華学園中等部』には美桜の婚約者たちがいる」〟 〝「彼らはお前に降りかかってくる どんな危険からも守ってくれるだろう」〟 〝「そして美桜、お前は中学校卒業までの三年間の間に、 婚約者候補の中からたった一人、未来の旦那を選ぶのだ」〟 これから通う学園の中に、私の婚約者達がいる。 例え、彼らが何をしてきたって 私はゼッタイに、結婚なんてお断りだ。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop