隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
「越谷。 こっち俺がやるから自分で直しなよ」


 朔耶はデータ管理用のタブレットをインカメラにして寄越して、かわりにわたしが持っていた洗濯物回収用の籠を手にした。


「いいの? ありがと~!」


 相変わらず朔耶は気が利くな、なんて思いながら自分の髪をチェックすると、確かにポニーテールにしていた髪が崩れてぼさぼさになっていた。 一度結び直さなくてはとゴムを取って髪をまとめなおす。

 
 すると、少し離れたところから朔耶の「なんだよ」というばつの悪そうな声がして、目を向けた。

 いつも穏やかな朔耶が、少し顔を赤くして他の一年生たちを睨みつけている。

 なぜかみんな朔耶を見てニヤニヤしていて、朔耶はそれが気に入らないらしかった。


「朔耶ってわかりやすいよな~」「他の男にさわられんの嫌だったんだろ~?」


 みんなが口々に言うのに対し、朔耶はなにか言おうにも言えないといった様子。

 話についていけてないわたしは、首を傾げる。


「ねーなんの話?」


 そんなわたしと目を合わせた朔耶は、なぜかさらに顔を赤くした。


「~~~っ、越谷、これ頼んだ!」

「あっ、はい!」


 朔耶はわたしに集め終えた洗濯カゴを寄越して、バッと背中を向ける。


「パス練行くぞ!」


 朔耶に言われた一年生のみんなが「はいはい」となぜか嬉しそうに返事をしてフィールドに出ていく。

 今日も朔耶は気合いが入ってるみたいだ。

 わたしも頑張ろう……!

 

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