隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
 一人マイペースな優成は腰のポケットから手のひらサイズの無線を取り出して口元にあてる。


「こちら体育館酒々井、~~……、」


 優成は無線に向かってボソボソとしゃべりかけている。

 ……? なんて言ってるんだろう。 仲間と連絡取り合ってる?
 

『……、……~、』


 雑音に混ざる無線先の返事を聞いた優成は、舌打ちした。


「……了解。 到着次第突入してください」


 そう言って無線をしまうと、今度は先生たちを縛っていた縄をほどきにいく。


「ゆ……優成……?」

「んー?」


 恐る恐る話しかけるわたしにのんびりとした返事を返す優成は、この事態について何かを説明する気はなさそうだ。

 他の生徒たちもわからないなりに、銃を向けてくるテロリストがいなくなって少しずつ安堵の空気が広がり始めている。


「えっと、優成って結局、何者、なの?」

「んー、ハハッ。 なんだろうね」


 この期に及んでまだ教えてくれないの!?

 優成は縄をほどきながらわたしに視線を向けた。


「前世とあんまり変わってないよ」

「え? それって、」


 殺し屋?と聞こうとした、その時。

 何かに気付いた優成が、血相を変えてわたしの前に飛び込んだ。


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