隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。

「おはよー！」


　無事に教室まで辿り着いたわたしは、引き戸を開けて元気いっぱいに声をかける。
　すると、気づいたクラスメイトが振り向いて笑顔を向けてくれる。


「おーひまりー！おはよー！」
「おーす越谷ー」
「おはよーひまりんっ！」


　口々に挨拶を返してくれるみんなと他愛もない話をしながら、前から三番目、左から二番目の自分の席に向かう。

　その隣に柔らかそうな黒髪を見つけて、妙に気持ちが沸き立った。

　頬杖をつきながらスマートフォンを操作している彼に、わたしは満面の笑みで歩み寄る。


「おっはよー！優成！」


　突然横から顔を覗き込ませたわたしに、優成が驚いた目を返す。

　あ、こめかみの殴られたところは腫れてないみたい。


「…………おはよう」


　一応返事をしてくれた優成に嬉しくなってヘラヘラ笑顔を返すと、自分の席にスクールバッグをおろす。
　

「あ、ねー昨日の数学の宿題やった？　問三がよくわかんなくて昨日美紗ちゃんに聞いたんだけど、自分で考えろって怒られちゃってねー」


　なんでもない話をしながらバッグから引き出しへ教科書をしまっていると、


「いや距離感」


　優成が口を挟んだ。