君と奏でる世界は、虹色に輝いている。

12月に入り、クリスマスコンサートのリハーサルが始まった。

でも夏音さんのことを知って、自分の気持ちに気づいてしまった以上、やっぱり今まで通りにはできなくて。

普通に接しなきゃと思うほど、どうしたらいいかわからなくなる。

音楽を通して近づけたと思っていた心の距離が、一気に遠くなった気がして。

この気持ちに気づいたからと言って、私自身、自分がどうしたいのか、まだはっきりわからないんだ。

今まで通りにもできないけど、行動を起こす勇気もない。

そんな中途半端な自分が自分で嫌になる。

「結音ちゃん、ちょっといい?」

リハーサルが終了したあと、篠崎さんに声を掛けられた。

篠崎さんに促されて、会議室に入る。

もしかして、私の様子がおかしいから怒られたりするのかな。

「本当は、まだ結音ちゃんに言わないでほしいって言われてたんだけど……」

篠崎さんが、少し言いづらそうに声のトーンを落として話を続けた。
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