【番外編】もしも願いが叶うなら… ー星空の下、キミとの約束。

#7


「今日は、カラオケでも行く?」

「ありあり、鈴も行くっしょ!?」


今日は部活がオフの亜由。

亜由を含む友人たちに誘われて、私はにこりと笑顔を返す。


「もちろん!」


頭の片隅に、奏は何してるかな、なんて思考がちらついたけど、気付かないふりをして友人たちの後を追う。


「鈴ちゃん」

「伊藤さん!!?」


廊下から呼ばれた私の名前に、いち早く反応したのは亜由。

私が振り向くよりも前に大声で叫ぶから、先輩がいる驚きよりも面白さが勝ってしまった。


「亜由、反応早すぎ」


クラスメートも驚きの速度。

私は、真っ赤な顔を隠す亜由を横目に、廊下へと近づいた。


「この前言った大会、今週末だけど、考えてくれた?それと、マネージャーの件も」


笑顔の先輩の奥に見える、少し遠くでこちらの様子を伺うサッカー部の面々。


先輩は人気者だから誘う役をやらされているんだろうか。

だとしたら、断られたなんて、言いづらいよね…。


咄嗟にそんな考えが脳裏に浮かび、気付けば私は首を縦に振っていた。


そもそも、断る勇気なんてなかったし…


「大会、亜由と一緒に見に行きます!」


言うと、嬉しそうに微笑み、両手で大きな円を作って部員に向ける先輩。

その様子に、断らなくてよかったなあ、と内心ほっとする。


「じゃあ今週末!待ってるね。亜由ちゃんも!」


思わぬところで名前を呼ばれた亜由が教室内で、心を撃ち抜かれて頭を抱える。

そんな彼女を見て、先輩と笑い合い別れた。


「まじ、さすが鈴。超おこぼれもらっちゃってる幸せ~!」


嬉しそうな亜由を見て、やっぱり断らなくて良かったと、自分に言い聞かせていた。
< 27 / 40 >

この作品をシェア

pagetop