監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。


「…やっぱりダメだ。会長と副会長のあんなはなし、ひとにもらすわけには…」


「会長と副会長?が、どうしたって言うんだ?」


「…だれにも言わない?」


「言わない、言わない!」




 かかった。

 上がりそうになる口角を抑えて、「ぜったい言うなよ」と釘を刺しながら耳打ちする。




「生徒会室で、会長が副会長にプロポーズしてたんだ…」


「はぁっ!?」


「声!」


「あ、わり…!」




 バッと口を押さえた同級生の目には、らんらんとした好奇心が見えた。




「な、びっくりするだろ?」


「そのはなし、まじかよ?」


「おおまじだって。僕がさっきこの耳で聞いたんだ」


「うわー…!まさかあの会長と副会長が?」


「ほんとだよ。まえから、副会長も会長に対してはよくなついてると思ったけど…」




 目をそらした同級生の横顔を見て、ひそかに笑う。

 これで、うわさが広がるのは時間の問題だ。


 さぁ、落ちていけ、財前、藤枝…。

 空いた席には、僕が座らせてもらう。



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