監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。
「学園の施設ではなにか細工をする可能性がありますね。近くの宿を取りましょう。いいですね、藤枝、財前」


「はい」


「は、はい」




 声を上げたのは、私たち2年特進クラス担任の辺春先生だった。

 しわのある厳格な顔を私たちに向けた先生は、返事を聞くとうなずいて、会議は終わりというように先生方の顔を見回す。


 そうして、私は財前先輩と辺春先生に見張られて、宿でしばらく生活することになった。




****




「藤枝、そう思いつめた顔をするな。これでも飲め」


「あ、ありがとうございます…」




 3台のベッドがならんだ宿の一室で、財前先輩にアイスティーを渡されてありがたく受け取る。

 おずおずと、グラスに口をつけてから、私はまえに立つ財前先輩を見上げた。
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