監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。


 あれ、私いま、鳩野さんが監獄学園に入った理由を聞いてるんだよね…?




「お兄ちゃんとの日々はいくらでも語れるんですが、ときは9歳まで飛ばします」


「は、はい…」


「あれは夏真っ盛りの8月16日のことでした。公園で女子をいじめていた男子数名を鉄拳制裁して、まぁ人間イスにしたりなんだりしていたんです」


「え」


「そこに、お兄ちゃんがやってきて…いじめられていた女子からはなしを聞いたお兄ちゃんは、自分に言ったんです」




 そっとまぶたを伏せる鳩野さんを見て、ごくりとつばを飲む。

 いまのところまったくはなしが掴めていない。




「“わるいやつにお仕置きするなんて、真波(まなみ)は看守さんみたいだね”って」


「看守…」




 あれ、ちょっとはなしがつながった?

 鳩野さんは「はい」とうなずいて目を開けた。

 その瞳は半目ながらも、どこかぎらぎらとした熱を感じる。
< 251 / 289 >

この作品をシェア

pagetop