Bravo, nous avons gagné !
“不要”と云う名のお嬢様
 御厨芙蓉が、自分の名前の由来が“不要”であることに気付いたのは、まだ幼気な小学生の頃だった。
 シンデレラが、継母や義理の姉にいびられたのに対して、芙蓉の場合、実の両親と実兄に虐げられている。
 芙蓉は大富豪の娘だが、19年間ずっと、家族のことで苦しみ続けて生きてきた。
 生まれも育ちもド田舎で、この町全体が異常なまでに封建的かつ男尊女卑も酷い環境であり、町一番の大富豪である御厨家は、その最たるものだ。
 ゆえに、女の子に生まれおちた瞬間…たったそれだけの理由で、芙蓉は家族全員から、ずっと存在自体を否定され続けている。
 両親も、歳の離れた兄も、周りからは羨望の目で見られているものの、その本性は鬼畜以外の何者でもない。
(自分を不幸だと認めたほうが、少しはマシなの?しかし、それはそれで、尚更惨めな気もするし、自力でどうにかしたいのに…)
 ベッドに横たわり、芙蓉は、いつものように、何とか一日でも早くこの家を出てゆく術を考えていた時、食器か花瓶の割れる音がした。
(また始まった。全く、やってられない…)
 芙蓉は、重い溜息をついた。
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