Bravo, nous avons gagné !

残酷な男と哀しい女

　芙蓉の兄の一樹には、数年交際してきた、雅子という婚約者が居る。
　しかし、婚約者とは名ばかりで、なかなか結婚の話は進んでいなかった。
　芙蓉が実家を出て夕夜と暮らし始めてから、数ヶ月後のこと。
　ある晩、この田舎町に一つしかない、大型ショッピングモールの駐車場に、一樹は自慢の高級車を停めた。
　助手席の雅子が、
「一樹さん、あの子…芙蓉ちゃんじゃない？」
　そう尋ねる。
　一樹は雅子の指さす方を見遣り、舌打ちした。
　芙蓉と夕夜が、見るからに親しげに店から出てきて、目の前を通り過ぎたのだ。
「あのガキ…家を出ていってせいせいしたと思ってりゃ、男といちゃついて、いい気なもんだな」
「でも、最後に会った時はまだ少し幼さも残ってたのに、本当に綺麗なレディになったわ。それに、一緒に居る男の人も素敵」
　そんな雅子の言葉が逆鱗に触れたのか、一樹は雅子の髪を思い切り掴んだ。
「痛い…！」