Bravo, nous avons gagné !
不思議な美青年
 吉野夕夜のプロフィールというと、グッドルッキングでマルチリンガルの帰国子女。しかも、4年前までは、国立大医学部の学生だった。
 それが、惜しげもなく大学を中退した後は、家庭教師と掛け持ちしていたバイト先のパン屋に就職し、黙々とパンを焼く日々…。
 かなり変わり者の貧乏青年、というのが周りの評価だ。
 二人が出会った頃、芙蓉はまだ12歳。ロリコン趣味などない夕夜は、最初こそ、単純に彼女のことが心配だっただけである。
 よくも悪くも温室育ちの夕夜は“機能不全家族”というものを、芙蓉の家庭で初めて目の当たりにしてしまい、とても彼女を放っておくことなどできなかった。
 そして、3年間の家庭教師のアルバイトが終了したあとも、芙蓉とはずっと交流を持ち続けている。
 芙蓉もまた、夕夜のことを心から慕っていた。夕夜が医大生というステイタスを捨てても、彼女だけは全く態度が変わらなかった。
 周りの他の女たちはというと、
「どうかしてるわ。頭の良すぎる人って、変人で気味が悪いものね」
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