パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
コンビニの前で今度は違う恐怖に怯えながら数分、なんて言い訳しようか考えたけどここは最初に降伏宣言した方がいいかもしれない…

なんて思っているとケイが自転車でやって来た。

うわぁ…、遠くからでもわかる。

すごい殺気だ…
このまま突っ込んで来たらどうしよう。

「紫衣!」

「ごめっ」

「あいつは!?」

何か言われる前にって頭を下げよう…
としたんだけど、自転車を投げ捨てたケイが私の両肩を掴んだから下げられなかった。

「え…、あ?柏木先輩?もう帰ったと思うけど」

蒼白くこわばった顔でガシッと肩を掴む。 
 
「何かされたか!?」
 
「ううん、それは何も!どっちかっていうと私が言っちゃったていうか、それでそのまま逃げて来ちゃったから」

どれだけ全力で自転車を漕いで来たのかがわかる、さっきの私みたいにはぁはぁと肩を揺らしながら呼吸をしてたから。

そんなに急いで来たの…?

「………そーかよ」

かと思えば、はっと息を吐いて置いた手を離しそのまま何事もなかったかのように投げ捨てた自転車を取りに行った。

「…え、それだけ!?」

さっきの勢いは!?

迫力すごかったけど…

てゆーか怒られると思ってたのに。


そんなにケイの中で大きいんだ。

いつでも思ってるんだね。


「…柏木先輩のことそんなに怖いの?」

「怖くねーよ、何言ってんだ」

「だって、すごい顔してたよ?」

汚れを払いながら自転車を起こして、振り返った。


まっすぐ私の瞳を見て。


「紫衣に何かあるのが怖いんだよ」
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