パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「今日は彗と一緒じゃないんだ」

「あっ…は、はい…」

にこりと微笑む姿が今は怖くて、この裏側に隠れた本当の姿のが見えてるように思えて。

顔が見られなくて視線を下ろすと、柏木先輩がフッと不敵な笑みを浮かべた。

「一緒にいない方がいいか、バカが移る」

静かに私の隣を通り過ぎて行く、耳元に嫌悪感だけを残して。

「あいつ、家でもそうなんだよな。雲隠れするみたいに気配消して、だったらもう消えてくれりゃいいのに」


………。


どうして、どうして柏木先輩がそんなこと言うの?

言えるの?


そんな風にしてるのは柏木先輩でしょ!


彗くんがどんな気持ちであの家にいるのかわかんないの?


また体の中から溢れ出そうになっちゃう、ふつふつと熱くなって止められなくなっちゃう。

「なんでですか?」

通り過ぎようとうする柏木先輩に向かって、最初は静かに声を出したつもりだったのに振り返った頃には自分でもびっくりするぐらい大きな声で叫んでた。

「なんでそんなこと言うんですかっ!?」

柏木先輩は冷静に私のことを見ていた。

「だって柏木先輩がっ」

止められなくて勢いのままもっと叫ぼうと思った時、柏木先輩に腕を強く引っ張られた。ぎゅっと力が入って痛いほどに。

「…っ」

えっ、何!?何かされる!?

学校(ここ)で…!?

振りほどこうとして思いっきり腕を振ったけど私の力では無理で、ギンッと開いた柏木先輩の目が近付いて来た。

やばっ、これはやばい…

かもしんない!!?
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