パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
あわててプリクラ機から離れて駅近のゲーセンから出た。

駅から学校までは歩いて20分ぐらいだから…うん大丈夫!まだ間に合う!

「ねぇねぇ紫衣ちゃん!」

グイっと私の腕を引っ張った。

たぶん聞いてほしくてただ力が入っちゃっただけだと思うんだけど、彗くんの手が私の腕を掴んだから。

触れたから。

衣替えもとっくに終わった7月、素肌に触れたことに頬に熱が帯びる。

「夏祭りあるよ!」

私の腕を掴んだまま反対の手でまっすぐ指さした。

「夏祭り?」

指のさされた方を見ると夏の花火大会のポスターが貼ってあった。

あ、もうそんな時期かぁ。もうすぐ夏休みだもんね、夏祭りもすぐだね。

「紫衣ちゃん…一緒に行かない?」

彗くんがこっちを見たから自然と私も隣を見ちゃって、目が合った。

「夏祭り、オレと」

彗くんと夏祭り…?

「行く!行きたい!!」

私を見て目を細めるようにして肩を上げて笑った。

私と行くことを喜んでくれるみたいに嬉しそうで、頬はさらに熱を帯びちゃって。

キラキラまぶしく見える。

彗くんの周りが全部光ってるみたいに。

「夏祭り、楽しみだね!」

「楽しみ!私浴衣着て行こうかな!?」

でもね、どうしてかな。

心の奥はどんより曇ってたの。

いつもは明るくしてくれる彗くんの笑顔なのに。
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