パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
なんなのそれ、全然意味わかんないんだけど。

だってそれって…!


「柏木先輩はずっと彗くんのことをいじめてたってこと…?」


私の少し先を歩いていたケイが立ち止まった。

何も言わずゆっくり振り返った。

何も言わなかった。


でも少し歪んだ表情でわかってしまった。


「ひどい…っ」

ひしゃげたプリンがすべてだったんだ!

すべてを物語ってたんだ…っ!

「彗くんはずっとあんなことされてたの!?いつから!?いつからなの、彗くんは…っ!」

私が見たのはほんのちょっとで、彗くんはずっと前からひどいことされてたんだ…!

私の知らない、想像できないくらい…っ 

「許せないっ、なんなの…っ!なんなの!?なんでそんなっ、ありえないよ!!」

じわじわと瞳に水分が溜まる。

彗くんのことを思ったら、どうしても耐えられなくて一気に溢れ出た。

「なんで…っ」

ずっとそんな思いを抱えて来たなんて…!

笑っていた裏側でそんな思いを…っ

お兄ちゃんにいじめられて、お母さんにも守ってもらえなかったなんて…

彗くんがそんな思いをして来たなんて…


私は何も知らなかった…!
 

「彗くんに…家の中に居場所はないの?」

「ないってことはねぇよ、自分の部屋にいる時とか風呂とか彗が出て来ることもある。それに記憶の操作である程度は補える」

「……。」

どこまでもすごいんだね、記憶操作ってやつは。

私の頭では考えられないことばかりだ。


ポロポロと涙がこぼれて来る。

彗くんを思ったら悲しくて。


ずっと彗くんは耐えて来たんだ…


つらかったよね?

かなしかったよね?

こわかったよね?


さみしかったよね、ずっと1人で…
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