パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「…ィ、ケイ!ねぇ、どこまで行くの!?」

人だらけだった夜店を抜けて河川敷まで来た、ここからの花火は少し遠くておかげであまり人がいない。

歩きやすくはなったけど速足で歩いたから疲れたし下駄の鼻緒が痛くて…っ

「ちょっと待っ…わっ!」

転んだ…

のをケイが抱きしめるように助けてくれた。

「……ありがとう」

ケイに預けちゃった体を起こしてくれた。その場に真っ直ぐ立たせてくれて、ずっと手は繋いだまま。

ケイと向き合うみたいになった。

何から言ったらいいのかわからなくて切れそうな鼻緒を見て、すぅっと息を吸った。

「…あのっ」

「俺から離れるなって言っただろ!」

突然の大きな声にビクゥッと大きく体が揺れた。

言いかけた言葉もどこかへ言っちゃった。

いつも冷静で淡々としててそんな感情的な声聞いたことなかったから…

恐る恐る顔を上げる。

見るのがちょっと怖かった、視線で刺されるぐらい睨まれてるんじゃないかって…

「……。」

思ってた瞳と全然違った。

哀しげな目で私を見ていた。

「お前に何かあったら困るんだよ…っ」

頭をこてんと私の肩に乗せて、繋いだままだった手にぎゅっと力が入った。

ドクンと心臓が音を出す。

真っ暗で灯りが少ない河川の周りは静かで、むしむしと熱い夏夜に走ったせいで汗ばんだ体が火照る。


熱い、胸が熱い… 


きゅーっと締め付けられるような感じがして、やっぱり声が出せなかった。


どうしてそんな顔をしてるの?



なんでケイが、そんな顔するの…?
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