「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。
 踏んできた場数が違うためか、夫人は強かった。彼女のペースに乗せられた時点で、駄目だったのだ。

「それを言うなら、俺も乗せられていましたよ。ランカーソン伯爵夫人、やはり彼女は要注意人物だ……」
「それにしても、彼女の自信は一体どこから来るのでしょうか?」
「わかりません。ただ、あれはハッタリではない気がします。もちろん、今回のことを俺は各所に訴えかけますが……」

 クルレイド様の声は、少しだけ弱々しかった。
 それは夫人の謎の自信が、気になっているからだろう。
 彼女に何があるのか。それを考えながら、私達は市から立ち去るのだった。
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