キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「出てみよう……。誰か他の人に会ったら、スポンジを貸してもらおう」


意を決して、ガチャリと扉を開ける。

でも廊下を歩けど誰にも会わない。というか物音一つしない。

もしかして、みんなして不在なのかな?


「みんな名家の跡取りだもんね。凌生くんは既に仕事任されてるみたいだし、聞いたら高校生だっていうし。学生と仕事を両立するのは大変だよ」


それなのに、今日は私の買い物に付き合ってくれた。

買い物中も、仕事の電話をしていたくらいだ。メールも確認していたっけ。

猫の手も借りたいほど忙しいはずなのに……。

それでも私と買い物をして、そして――


「またキスしちゃったよね……?」


思い出すと、ボンッと顔が赤くなる。

だって、だってだって。

凌生くんはキスをする度にパワーアップしてるっていうか。

唇が触れた瞬間からいっぱいいっぱいの私からすると、凌生くんの長くて濃いキスはキャパオーバーもいいところだ。
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