キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「でも、このままじゃ――!」


と叫んだ時。

ガキンと音がしたかと思うと、鉄パイプと共にお兄さまが床に倒れた。

無防備になったお兄さまを狙って、男二人が一気に近寄って来る。

もちろん手にはナイフを持っていて――


「やだ、お兄さま!」


駆け出そうとする私を、なおも怜くんは許さなかった。

グッと力強く握られた手は、何をしようが動きそうにない。


だめ、だめだよ。

このままじゃ、本当にお兄さまは――!


「逃げて、お兄さまぁ!!」


大声を出した、その時だった。



「もう大丈夫だ、未夢」



ふわっ


一瞬だけ私の頭に乗った、温かな手。

その温度はすぐお兄さまの元へ駆けて行き、



キンッ



迫るナイフを、勢いよく弾き返した。



ㅤ𓈊⚜


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