Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
 とうとう新しい彼氏が出来たのかしら⁈ でも仕事ばかりだったし、そんなわけないかーー考え事をしていたせいか、お店の前を通り過ぎようしたが、
『目的地に到着しました』
というナビの声でハッと我に返る。

 振り返ると、黒い日本家屋の戸口に『和茶房 花』と書かれた暖簾がかかった店が現れる。間口はあまり広くはないが、昔の長屋の名残が残るこの地域の土地柄、奥行きがあるように見受けられる。

 店の前には蛇行するように若い女性たちの列が続いており、ここが人気店であることを物語っていた。

 先ほど届いたメッセージには、『店内のカウンター席で待っている』と書かれていた。並んでいる人たちに少し申し訳ない気持ちを抱きながら、春香は暖簾をくぐり扉を開けた。

 すると新しい木の香りが鼻先をかすめる。ほうっと息を吐いてから店内を見ると、外の雰囲気と同じように、落ち着いた色味のテーブルや椅子の席、ボックス席が見られた。

「いらっしゃいませ」

 店内を眺めていた春香は、作務衣姿の男性店員に声をかけられたため、驚いて体をビクッと震わせる。

「えっと……」
「お連れ様があちらでお待ちです」

 店員に誘導され、テーブル席とは反対方向に進む。そこはカウンター席になっており、一番奥の席に座っていた椿が春香に手を振っていた。
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