【第一部完結】悪の皇女はもう誰も殺さない

一章 悪の皇女はもう誰も殺さない


目を開くと見覚えのある真っ白な天井が目に入った。


「え……?」


自分の声に違和感を感じていた。
喉に手を当てようと持ち上げると、小さな手のひらに気づいて驚き目を開く。

(子供の手……?どうして子供がいるの?)

俯いたことでハラリとホワイトブロンドの髪が目の前にパラパラと落ちたことで心臓がドクリと音を立てた。

(何か……何か大切なことを思い出せそうな気がするわ。ここはわたくしの部屋、よね?)

慌てて立ち上がると手足の長さや感覚が違うからかベッドから転げ落ちてしまう。
額をぶつけながらも起き上がり鏡に向かって走った。
そうしなければならないと思った。

目の前には大きな椅子がある。
ガタガタと揺れる椅子になんとかよじ登って、鏡台に捕まりながら身を乗り出した。
鏡に映る自身の顔に小さな手のひらを当てる。
美しいラベンダー色の宝石のような瞳と目があった瞬間にすべてを理解する。

(わたくしはキャンディス……キャンディス・ドル・ディアガルドだわ。なのにどうしてこんなに胸がざわつくの?)

鏡から手を離して頬を撫でる。
そのせいでバランスを崩したのか体がゆっくりと後ろに倒れ込む。
ガタンッという大きな音と共に、キャンディスは後頭部を強く頭を打ちつけてしまう。
遠くから女性達が駆け寄ってくる。
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