私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 彼はもう、疑惑を超えて確信しているのだ。
 物的な証拠があるとは言わなかった。
 それでも爽歌だと思うほど……幼い頃から一緒にいたからこそ、穂希は気付いてしまったのかもしれない。
 どれほど葛藤しただろう。
 他人の一鈴ですら、吐くほど戦慄した。
 だが、彼はそれを超えて一鈴に会いにきた。

 穂希を見る。
 暗がかりの中、彼は真剣に自分を見つめていた。
 引き締まった体に細身のスーツが似合っている。黒髪は夜目にさらに黒く、乱れた前髪は顔に影を作り、憂いを深く刻んでいた。鋭い目は今は感情を殺すように自分を見ている。

 鏡のお守りは壊れた。
 役目を果たし終えたのか、役目に耐えきれなかったのか。
 一鈴はぎゅっと手を握りしめた。爪が手のひらに食い込み、痛みが走った。

 呪いじゃない、と言ったのは自分だ。
 だが、実際に呪いじゃない、人間がやっていたのだと、その人物の気配が濃厚になることが、こんなに怖いことだなんて。
 彼が、その本人に狙われているなんて。

 穂希が幸せになるのならそれでいいと思っていた。
 だが、このままで彼は幸せになれるのか。
 お守りのように扱われたとき、不満があった。お守りじゃありません、とずっと言ってきた。
 だけど。
 穂希をじっと見る。
 今は、あなたのお守りになりたい。

 一鈴は意を決して口を開いた。
「私を愛人にしてください」

「はあ!?」
 穂希はあっけにとられて一鈴を見た。
 一鈴は笑いもせずに彼を見返した。
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