家出少女の反抗
変な話だ。


与えられたコーヒーを一口飲む。


苦くて……ほんのりと酸味のある味が、口の中に血が入った感覚みたいに広がってゆく。


「でも……愛さんと一緒に暮らしてゆくと考えたら、優さんにぞっこんだし……優さんと何も無ければ、暫く我慢できると思います」


愛って少女は、私達女の子からしたらぶりっ子で凄く鼻につく奴ではある。



でも、本人の恋愛事に首を突っ込まなければ、なんともないことも多い。


このまま野宿を繰り返して、援助交際でお金を稼いで一人ホテルに駆け込むよりも、こっちのほうが安全かもしれない。


「ここに住まわせてくれませんか?」



コーヒーを飲み終えた後、そう口にしていた。



「え……いいの?」


「このまま泊まるなんて考えもしなかった」と言わんばかりに、驚いた優。



まぁ、他の理由もあるかもしれないけれど……。



「はい。泊らせてください。……というより、匿ってください。色々と気まずい事が多すぎて困ってるんです」



頭を下げた私に、優は「顔を上げてよ」と優しく問いかけた。




顔を上げると、王子座りをした優が。



透明で透き通るような、顔立ち、細身の体、長い手の先の指が光って見える。


ーー人って優しいオーラが出る事ってあるんだ……。


「俺は、君の事よく知らないけれど……困っているなら助けてあげたい。だから、泊まるのなんて気を使わないで存分にここにいていいよ。人助けは僕の趣味だしね」


と頭を撫でてくれた。
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