家出少女の反抗

ーーパシッ!!


気合を入れるために、頬を叩いて涙を拭う。


「涙は、これで終わり」

今度こそ気持ちを整えて、立ち上がる。


朝に起きる時これぐらい清々しいものだったら、良かったのに。

石のように痺れる足を叩きながら、歩みを進める。

毎朝この「如月高校」に登校するのは少しーーいや、かなり身が引ける。

何よりこのヤンキーが集う学校であるからしていろんな差別や偏見、暴行事件が多発しているからだ。

年がら年中過激な思想を持つクラスメイトに同じ教室に閉じ込められ、正気を保てる人間がいたら尊敬したいくらい。

頭が痛くなるのを抑えながら、校舎裏を一歩一歩離れてゆく。

「如月高校」なんてなければ少しはマシになったのかもしれないのに、この有り様は正に地獄絵図という名に相応しい。


皮肉にもそんな状況は、私の通う二年六組にも波紋を寄せている。


私のクラスには、気に入らない本当に迷惑な男子生徒「二年六組30番 永山絢斗」
という輩がいる。

考えただけでも、顔が歪んでしまう。

すぐに名前を覚えるほどの、絵に書いたよなガキ大将。

そいつは気に入らない先生がいたらジリジリと先生が「イジメ」と断定できない上級皮肉を仕掛け、身動きを取れないようにしてゆく。


反抗精神を見せれば「そこまでいってないじゃーん」と上手い理由を見つけ笑いを誘ってその場を凌ぎその教師を辞めさせるのを見るのが、恒例事業である。

「全く消えてしまえばいいのに」と独り言のようにつぶやいて、近くにあった小石を蹴飛ばす。

そんな奴がカースト上位としてこの教室にいるなんて一体どうなっているんだと誰一人として声を上げないのが、この如月高校。

ーークラスでも気を遣わないといけないなんて、やってられるか!!

それがなかったら、もう少し気楽な学校生活が送れるのに!!

そう考えていたが、歩みを進めていた足を止める。

だがそんな奇跡は、起こり得ない。

この学校の生徒は人権よりも「差別」「暴行」「過剰な恋愛関係」が、主軸として動いている生命体。

心の内を零したところで「暴行」という手厚い歓迎により、不良生徒の不平不満の燃料となり燃えカスとなるだろう。

立ち止まったせいか、眩暈がする。

こんな学校に来たのが、運の尽き。


酷いときには一日何をしたのかさえ思い出せ無い程、感情が削ぎ落とされる日くらい楽しくない。

また歩みを進めて、中庭に差し掛かると目の前に入ってきた職員室を睨む。


ーー「学校なんて爆発して、なくなってしまえばいい」と周りの大人たちに相談したところで現実は変わらないし……。


一回だけ、相談した経験はあるからだ。



この如月高校が配属している、スクールカウンセラーの月川先生という診療医療に関わりを持つ専門家に。

私はその職員室から、急いで睨んでいた目を逸らし通り過ぎ鼻で笑う。

「そんな人間はこの学校にいないわ。みんないい子よ」と言われ、環境を変える手伝いはしてくれず心のストレス解消方法を提案されただけだったからだ。(多分、気が強い自分が正しいと思っている生徒に目をつけられるのが怖いから、手伝ってくれないんだと思う)



結局は耐えて学校に登校しなければ今の状況、「光の道」はないと大人たちに言われてしまったのだ。

もうすぐで中庭から出られる。


視界が白飛びしているカメラのように、眩しい。

一歩一歩、前へ。


オレンジ色に燃え上がる炎を溶かしたみたいに、太陽の光が差し込んできた。


ーー今日も憂鬱な家に帰らなければならないのか。仕方ない……。

小さい頃好きだった、花壇に足を止めてチューリップを眺めた。

家庭環境も複雑な私にとって、この「煙草を吸う」という行為は貴重で少しもの至福。


なのに世間一般的に言えば、煙草は未成年は禁止されるだなんて世知辛い。



中庭に咲いているチューリップを見て「きれいだっ!!」とはしやいでいた、幼稚園児ぐらいに戻りたい。


そんな中庭の花壇を通り過ぎようとしていた頃。



「霞、胸ポケットにある煙草の箱は何だ!!」



後から、嗄れた声をかけられた。

不幸はよく重なると聞くが、嘘であってほしい。

嫌な予感がして、ゆっくり後ろを向く。


一番視界に入ったのは、一本も生えてないニスを塗ったような光る頭皮。


だがそのことを誰も目の前で指摘せず、裏で笑われていることは沈黙の了解。


それを言ってしまえば生徒指導室にぶち込まれ、長文の謝罪の謝の字もない反省文を綴らされる運命を辿ることだろう。

顔を確認。

その先生の名前は体育教師、鹿田先生だ。

目の前で怒られてしまえばとても顔を見ていられないほど恐怖でおののく気配を持つ、怖い先生ではある。

ーー怖い先生「では」ね……。

鹿田先生を一望して、「なんのことでしょうか?」と言ってみせる。


学校内で悪口のネタにされる矛盾した注意発言の数々は生徒達の躁鬱とした苛立ちを買いすぎた先生の1人。


「何がいいたいのか、分からない」という理由で、運動部全般の部活動生に休み時間陰口を叩かれ話題にされていた。

「とぼけるな!!」と言われて、私の腕を掴もうとするものだから咄嗟に避ける私。


色々と生徒にウザがられている事が多い先生でもあるから正直あまり、関わりたくない。

ーーうわぁ………こんなタイミングで、出くわすとは……。



今更意味はないが胸ポケットにあった煙草の箱を掴み取り、後ろに隠す。




「隠しても無駄だ。持つだけで校則違反だってこと、知ってるだろ」
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