家出少女の反抗
一瞬バカにされたのかと思って机を蹴り飛ばそうと、足が動きそうになった。
だが凄い爽やかな笑顔で、私の頭を撫でられた途端意気消沈。
思考が停止する。
ーーーえ……これっていわゆる♡☓□△◯!?
頭の中で凄まじい文字が飛び交いながら、時が止まるような時間の中を私は泳いでいた。
優しく笑顔で私の頭を撫で続ける玲音先生は私を愛おしそうに見て「バカな野郎だ」と、冗談を言ってみせる。
その撫でた仕草や眼差しは、我が子を見守る「父親」のような優しい愛のようにも見えた。
ーーー悪い気は感じられない……むしろ好かれてる?
一瞬、戸惑った。
いつもの先生ならこんな生徒ウザがって頭を叩かれるだけだったのに、こんな展開になってしまうとは考えもしなかった。
しかも、全然可愛くない「周りから見ればごく「普通」の女の子」なのに頭を撫でられるのは心外だ。
一瞬私自身がこんな経験をしてしまっている事が恐ろしくなって、とっさに玲音先生の手を取った。
ゴツゴツとした大きな、頼りがいのある男の人の手………少し鼓動が早まる。
不意に、目があった。
慌てて目を逸らす。
「玲音先生………でしたっけ?」
撫でる手を振り払う。
落ち着いて前を見ると、一瞬玲音先生が悲しそうな顔をした。
何故、そんな顔をするのだろう。
感情を表に出したいのは、私自身なのだが。
それはおいておこう。
「俺?あぁ、そうだけど………。あっ、ごめん!!」
ついでに振り払われた手を引っ込め「ごめん!!つい、困ってる女子生徒いたら慰めたくなる性でさ。悪気はない」と苦言。
変な人だけど、一つそんな玲音先生に聞きたくなった。
「玲音先生は、人間関係ってやつが辛くなることってないんですか?こんな事してるのに、よく生徒達から嫌われないから不思議です」
一瞬玲音先生はキョトンとした顔をして、苦笑した。
「俺が?そんなふうに見えてたら、先生失格だな……」
にこやかに外を眺め笑窪を作る玲音先生に、哀愁漂う。
もしかして、落ち込んでる?
でも、事実だしな……。
「でもそんな馬鹿な俺でも人付き合いにはちゃんと考えて動いて、努力してるっては思う。俺が言うのも、何だけどな」
「例えば、どんな事ですか?」
「例えば………か。うーん。毎日元気でいることと、人が嫌なことを言わないって事か……」
「本当に、それだけですか?」