ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活
 私はここでテレビを切った。勇人は誰にも渡したく無いという気持ちが胸の中で湧く。

(このままずっと一緒にいたい……)

 ゾンビパニックがはじまり1週間が過ぎた。ゾンビウィルスの抗体薬はまだ完成しておらず、未だにテレビはゾンビパニックのニュースのままだ。サブチャンネルでは変わらず動物園や水族館の特集を流しているのに加え、子供向けアニメも放映されるようになった。

「果林」
「……多賀野くん、おはよう」

 勇人はゾンビのままだ。顔は無表情で目に光はないままだが、動きは人間のそれと全く変わらなくなった。成長なのか元に戻っていっているのかは分からないがおそらく前者な気がする。
 父親もこの家に戻ってはいない。あと市役所に電話は一応毎日している。電話する度にクラスメイトから早く市役所に来るように迫られているのがめんどくさい。
 
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