クズなアイツが惚れたなら、(旧・プレイボーイが落ちるまで)

「氷牙がなんかしたんじゃないの?」

「…した」

「だろうね。またなにやらかしたの」

「人を常習犯みたいに言うな。べつに、ちょっと首筋借りただけだ」

「うん、言ってる意味マジでわかんないわ」



1から10まで説明する気にもなれず、口を結ぶと、頭上でちょうどチャイムが鳴って。

残念また聞くわ、と風のように去っていく直江。


そーいえば次で今日の授業は最後だな。

そんなことが浮かんだ先で、教室に小走りで入ってきた梅野が目に入った。



……あいつ、なにしてんだ?


珍しくガタゴトと音を立てて机のなかを手で探っている。

その上には綺麗に揃えられたノートと筆箱。だけどひとつ、見当たらない違和感に脳内が状況を把握する。


数学の教科書か。
なんだ、忘れたのか?



まだ先生は来ていない。


しばらくして諦めたように小さくなった背中にため息をついた。




……しょーがねーな。


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