星空とピアス
シャツの襟元に指を突っ込み、くいくいと形ばかり緩めてみる。喉を締め付けるスタンドカラーの白いシャツには結局、最後まで慣れずにバイト最後の日を迎えることになったけれど、ちょっとした達成感で店内に視線を巡らせた。半分近く埋まっている店内で、暖色系の照明がやんわりと角のバーカウンターを照らしている。

駅前の大通りから少し外れたところにある大人びた雰囲気のレストランバー。
短期バイトに採用してもらって1ヶ月、わりと楽しく働けたし、目標金額にも届いて俺としてはほくほくだ。

これで、あのピアス、買えるな。

あいつの、ヒナの、ふっくらとした耳たぶにきらりと収まっている小さな光を想像して知らず頬が緩みそうになる。口をへの字にしてあわてて真面目な表情に戻した。
あと3時間ちょい、がんばらねーと。

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