惑わし総長の甘美な香りに溺れて
「そ、その前につき合ってることをお父さんたちに言うべきなんじゃ……?」


 あれ? 言うべき、で合ってるよね?

 いや、その前に義姉弟でつき合って大丈夫かって聞くところ?

 あまりに胸の鼓動が早くなりすぎて混乱してきた。


「ふはっモモ、かわい」

「えぇ?」


 こっちは真面目に悩んでるのに!

 私をからかっているような陽を睨み上げると、今度は妖しく危険な雰囲気の陽になる。

 また違った意味でドキリとした私に、陽は艶やかに笑った。


「両親に言って良いんだ?」

「だ、だって。そういうことするなら言わなきゃでしょ?」

「反対されるかもしれなくても?」

「それは……」


 その可能性はないとは言えない。

 でも、お父さんたちなら多分許してくれるんじゃないかなって思うし……。

 そうは思っても不安もあって言葉に出来ないでいると、陽の長い指が私の顎を上向かせた。


「ま、反対されても諦めねぇけど」


 危険な、獲物を狙う肉食獣の目が私を射貫く。

 腰に回っている陽の腕に力が込められて、逃がさないと捕らえられる。


「萌々香……俺の光……俺にとって、最高の女」


 燃えるような、私の心を溶かしてしまうような熱を秘めた目が近づく。


「萌々香しか、いらない」


 呟いた唇が、私の吐息を吸い取った。

 唇を舌が割り入ってきて、すぐに深いところまで絡め取られる。

 私の全部が欲しいと、深くむさぼるようなキスで訴えてきた。


 でも、私が良いよ……と応えるように受け入れると、途端に甘く優しくなったキス。

 抱き合って、私たちは何度も唇を重ねる。


 鼻腔に届いた薔薇の香りは、今までで一番好ましい香りをしていた。
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