惑わし総長の甘美な香りに溺れて
N
 翌朝、いつものように陽と学校へ向かい教室前で別れる。

 そのままいつものように本でも読みながら調香のレシピでも考えようかな、と思っていたら珍しく景子が先に登校していた。


「景子、おはよう。今日は早いね?」

「あ、萌々香おはよう」


 挨拶を返してくれた景子は明らかに元気がない。

 憂い顔のクール系美女の姿はドキッとしちゃうくらい綺麗だけれど、親友としては捨て置けない。


「景子、どうしたの? 元気ないけど……」

「うん……」


 私の問いかけに頷きつつも、景子は迷うように視線を下に向ける。

 でも、ゆっくり顔を上げた景子は申し訳なさそうに私を見た。

 その目はすがっているようにも見える。


「ごめん。私と久斗の問題だし、ただの考えすぎの可能性もあるから迷ってたんだけど……でも一人じゃあ消化できそうにないんだ。相談に乗ってくれる?」

「もちろんだよ。悩みがあったら聞くって昨日も言ったでしょ?」


 親友の願いに、私は躊躇うことなく頷いた。
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