Music is lovers.
震災が終わった。
 シンイチは、妻のリノと娘を連れて、再び、東京へ向かった。
 娘は、私立の中学校へ行かせた。そこは、学生寮があった。
 いや、震災の避難所で歌ったシンイチは、かっこよかったと思った。
 それで、妻のリノは、思った。
 そうだ、と。
 結婚前の夫のシンイチは、こんな風に歌が好きだったと。
 そして、思ったのは、夫のシンイチは、歌手になった方が良いと思った。それで、妻のリノは、夫のシンイチのマネージャーになろうと思った。
 そして、こう妻のリノは、夫のシンイチに言った。
「あなた」
「何?」
「あなた、もう歌しかないと思う」
「え…」
「だから、私、マネージャーになる」
「え」
「仕事のことは苦労しなくて良いから」
「…」
「ボイストレーニングを受けたら?」
「そう?」
「その方がいいわ」
 妻のリノは、夫のシンイチに、マネージャーになると言った。それは、夫婦で、自営業をすると言った。
 それは、何年か前のアニメ化されていた漫画『パリピ孔明」と同じだと思った。ただ、あの漫画は、歌い手の月見英子は、女性で、孔明は、転生ものだったけど。いや、そうだったとも思った。
「妻のリノは、若い時、シナリオライターになりたかった。
 そうだ、と。
 シナリオライターになれなかったけど、脚本学校に通っていた時のことは、役に立ったと思った。
 そうだ、と。
 自分たちの人生は、ドラマよりも面白くないといけないと思った。
「あなた」
「何?」
「『パリピ孔明』の漫画みたいね」
「ああ、あの歌手の漫画か」
「そう」
「一緒に観たね」
 夫のシンイチは、ゲームよりも、ドラマが好きだった。
 そんなモテなくて、だけど、少しロマンティックなところがあって。
 そのまま、と思った。
 夫のシンイチは、ボイストレーニングへ向かった。
 いきものがかり『ブルーバード』をやはり、歌っていた。
 世間は、まだ、首都直下型地震の影響があったけど、彼らは、たくましく生きていた。歌が恋人のように。
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