僕の秘書に、極上の愛を捧げます
どこに向かっているのだろう。
タクシーの外で流れる景色を、お互いに無言で眺めていた。

さすがにラブホテルには行かないだろうから、シティホテルかな。

15分ほど走った頃、タクシーが路肩に停まった。
支払いをするから、と先に降りるように専務が私を促す。

え・・?
周りを見渡しても、ホテルらしき建物は無い。

ここは・・?

「宮田さん、こっちだよ」

背中を押されて向かったのは、広々とした敷地のある低層建てのマンションだった。

「あの・・もしかして、ここって・・・・」

「僕の自宅。5階だから、奥のエレベーターで上がろう」

専務が私の前を歩き、5階の角部屋のドアが開けられる。

「どうぞ入って。あまり片付いてないけど」

「はい・・お邪魔します」

「えーと・・右側がリビングで、左側は仕事部屋と寝室と空き部屋がひとつ。奥に浴室とトイレがある。そうだ・・・・シャワー浴びるなら、これを使って」

手渡されたのは、さっき佐伯さんから受け取っていた紙袋だ。
中を覗くと、シティホテルに常備してあるようなアメニティやバスローブが入っている。

「え? あの・・」

「『余裕の無い僕』を心配して、佐伯が手配してくれたみたいで。普段使っているものとは違うだろうから、少し不便かもしれないけど」

「いえ、そんなことは・・。それより、専務・・どうして私をご自宅に?」

気になったのはそこだ。
朝まで一緒にいたいと言えば、その・・することは決まっていて、それならばホテルの方が都合がいいはずだから。

「どうして・・って、宮田さんは僕の恋人だから・・だよ」



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