僕の秘書に、極上の愛を捧げます
彼と女性が役員室を出てから2時間ほど過ぎ、今日はオフィスには戻らないと連絡があった。
ミーティング後に社長と食事に行くつもりだったのか、特に夕方の予定が入っていなかったからかもしれない。

17時を過ぎ、これといった調整事項も無かった私は早々にオフィスを出て、ある場所に向かった。


カランカラン。
優しいドアベルの音に迎えられてお店に入ると、すぐにカウンターの佐伯さんが私に気づいた。

「こんばんは。・・って、宮田さんどうしたの? 成宮と待ち合わせ?」

「あ、いえ、今日はひとりです。・・佐伯さんに、少し伺いたいことがあって・・」

「それは・・成宮のことだよね? もちろんいいよ。何か摘まめるものを準備するから、こないだと反対側の部屋のソファで少し待っててくれる? 良かったら、これでも飲んでて」

佐伯さんにグラスを渡され、私は指定された部屋のソファに座る。

「あ・・美味しい」

グラスを傾けると、キリッと冷えた炭酸強めのジンジャーエールが私のモヤモヤまで弾けさせるような気がした。

とはいえ、私は佐伯さんに何を聞こうとしているんだろう。
どんな言葉を、期待しているの?

佐伯さんは彼の友人であって、私の味方ではないのに・・。

「お待たせ。美味いサンドウィッチ作ってきたよ。さぁ食べて」

「・・はい」

「俺のところに来たのは大正解だよ。成宮以外で、あいつのことをちゃんと理解してるのは俺くらいだから」

そこから1時間ほど、佐伯さんは私に彼のこれまでを話してくれた。
出会った頃のこと、一緒に過ごした学生時代のこと、そしてご両親のこと・・。

「もし可能なら、今の成宮をそのまま受け止めてやって。婚約者なんかが現れたら、そりゃあ穏やかじゃいられないだろうけど、あいつ、宮田さんのことは本気だと思うから」

社長も『宮田は成宮を信じてやること』と言っていた。

まだ自分が彼の恋人だということにさえ自信が持てないような状態で、私に彼を受け止めるなんてできるのだろうか・・・・。



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