僕の秘書に、極上の愛を捧げます
軽く会釈して、来た道を戻る。
追いかけてきてほしいと思いつつ、放っておいてほしいとも思っていた。

もう、訳が分からないよ・・。
目の奥が熱くなり、立ち止まってギュッと目を閉じた。


「俺も一緒に帰るよ」

彼の声が聞こえたのと同時に肩に重さが乗り、後ろから腕が回される。

「ごめん。もうひとりにしない。だから、一緒に帰ろう」

「でも・・・・小夜子さんが待ってますから・・」

「大丈夫だ。理紗がいろいろ話すだろうし、勘のいい人だから察してくれるさ」

そう言うと、彼は腕の中でくるりと私を自分に向ける。

「翔子が花屋で助けたのは、小夜子さん・・・・俺の母親だったんだよ」

俺の母親・・。
小夜子さん・・は、お母さん?

「え・・」

「すごい偶然だろう? さっき電話があったのは、翔子との出来事を俺に共有しつつ、そのお嬢さんに会う時に付いてきてほしいって。
ひとりだと心細いとかなんとか言ってたけど、あれは・・俺にその女性を紹介しようと企んでたな」

「えっ」

「そんなことしなくても、俺の方が先に翔子に出逢っていて、近いうちに紹介しようと思ってたのにさ」

ふふっ、と笑う彼を見ていたら、涙が込み上げてきた。

「えっ、えっ? どうした?」

ポロポロと涙をこぼす私に彼が慌てる。
ホッとして、気が緩んでしまったのだと思う。

「だって・・」

そう呟くと、次の言葉を続ける前に私を道端に引き寄せて、きゅっと抱き締めた。

「嫌だったか・・。ごめん、翔子の気持ちも考えずに紹介するなんて言って。やっぱり急ぎ過ぎたよな・・。
遠藤さんの存在が翔子の中で大きくなっていたこともあって、焦ってたんだ。振り回してばかりの俺より、翔子の隣は遠藤さんの方が相応しいんじゃないか・・って。
翔子の優しさにつけ込んで、親子で囲い込もうなんてズルいやり方だった。本当にごめん」



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