僕の秘書に、極上の愛を捧げます
小夜子さんの住むマンションに入り、彼が部屋のインターホンを鳴らす。

「恭介、宮田さん、いらっしゃい。潤さんから、宮田さんも来てくれるって聞いてたのよ。貴弘も久しぶりね、元気にしてた?」

「・・はい。お久しぶりです」

「どうぞ、入って。理紗も少し前に着いたのよ」

リビングに入ると、広いソファに座っていた男性が立ち上がった。

「みんな揃ったな。小夜子も、隣に座りなさい」

「パパちょっと待って。どうしてここに、恭介のアシスタントと貴弘がいるの?」

「理紗、順番に話すから少し黙っててくれないか?」

潤さんにそう言われ、理紗さんは不満げな表情になる。
ここに揃った人たちは、これから話される内容をどこまで知っているのだろう・・。

「まずは、俺と小夜子だ。俺たちは籍を入れて夫婦になった。形式的な関係ではあるが、恭介は息子に、理紗とは姉弟になったわけだ」

これは私も聞いていたし、みんなが知っていることなのだろう。

「次に、会社のことだ。事業譲渡するために、関係各所に動いてもらっていた。だが、条件が折り合わなくて交渉が難航していたところで、思わぬ申し出があったんだよ」

「何・・それ・・・・聞いてないわ」

理紗さんが怪訝な反応をした。

「理紗、会社は恭介が継いでくれることになった」

「えっ? 恭介がどうして・・・・」

「『息子』だからね。親父と姉貴が守ってきた会社を、これからは俺が守っていきたいと言ったんだよ」

「恭介が継ぐなら、私も残るわ。譲渡するなら創業者の身内が残るのは良くないと思ったけど、恭介なら ───」

理紗さんの発言を、潤さんが笑顔で制した。

「俺と一緒に引退しよう、理紗。もう、会社のために犠牲になることはないんだよ」

「それって・・私はいらないということ?」

「そうじゃないさ。理紗も、幸せになるタイミングが来たんだよ」

潤さんの発言に、佐伯さんが立ち上がった。



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