【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
(そうよ。もしも好意を抱くとしても、その場合は『年の離れた兄』に抱く感情に近いはずだわ。絶対に、恋愛感情にはならないに決まっている)

 心の中でそう思い、私はソファーに横になった。そうすると、クレアに「寝台で、眠ってくださいませ」と注意をされてしまう。……そうよね、ソファーで眠ったらいろいろと面倒よね。

「ごめんなさい、クレア。寝台に移動するわ」

 だから、私はクレアにそう声をかけて、ゆっくりと寝台に移動する。寝台に寝転がれば、そこは想像以上にふかふかで少々驚いてしまう。……この寝台、どれだけ高価なものなのかしら? そう思ったら、少し怖くなってしまったかもしれない。

「では、何かがあれば頭上にあるベルを鳴らしてくださいませ。私かマリンが駆けつけますので」
「ゆっくりとお休みくださいませ、シェリル様」

 クレアとマリンが、一礼をしてそう言う。その後、お部屋を出て行こうとするので私は慌てて二人を呼び止めた。そうだ、言わなくちゃいけないことがあるのだ。……明日のお食事を、胃に優しいものにしてほしいと。

「あ、クレア、マリン。明日の食事のことなのだけれど……」
「あぁ、承知しておりますよ。しばらくの間、胃に優しいものにしましょうね。料理人に伝えておきますので、ご心配なく」

 でも、クレアはそう言った後「おやすみなさいませ」と続け、お部屋を出て行ってしまった。……何故、クレアとマリンは私が言いたいことが分かったのだろうか? そう思ったけれど、胃の調子が悪いと知っているのだから、それはある意味当たり前だったのかもしれない。

「……ここには、私の体調を心配してくれる人が、いるのよね」

 実家にいたころは、使用人しか心配してくれなかった。でも、ここにいる人はそれ以上に温かい人……なのかもしれない。少なくともクレアやマリン、ギルバート様は温かい人だ。ギルバート様は、少々不器用みたいだけれど。

(もう一度、ゆっくりと眠ろうかな)

 心の中でそうつぶやいて、私はゆっくりと目を閉じた。

 そして、次に目が覚めたのは――次の日の朝だった。
< 27 / 157 >

この作品をシェア

pagetop