【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
(……私の父は、そんなことをしないわね。絶対に)

 そして、そんなことも思う。私の父は身勝手な人だ。継母も、身勝手な人だ。エリカも、身勝手だ。身勝手が三人集まれば、とんでもないことが起こるのは目に見えている。……アシュフィールド侯爵領の領民たちが哀れだけれど、今の私にできることはないのよね。ごめんなさい。

「というわけでして、シェリル様もぜひ、一度このリスター伯爵領の街に出向いていただきたく……」
「……ねぇ、どうしてそうなるの?」
「そりゃあ、未来の奥様になっていただくためですよ!」

 ……うん、ごめんなさい。意味が、分からないわ。そう思って私が眉を下げれば、サイラスさんは「旦那様に、同行の許可を取りに行きましょう!」と言って私をソファーから立たせて、グイグイと背を押す。……ちなみに、今の私はマナーレッスンの休憩時間だった。だから、ゆったりとしていたのだ。

「旦那様も、お美しいシェリル様とデートが出来れば、少しは婚姻を意識してくださると思うのです」
「……あの、ギルバート様は私のことなど眼中にない――」
「いえいえ! きっとシェリル様の魅力に気が付けば、貴女様を妻にしたくなるはずです!」

 ……本当に、意味が分からない。ここ数日毎日思っている感想を、脳内で零しながら私は背を押されギルバート様の執務室に向かう。途中、メイドたちとすれ違った際には、彼女たちに「旦那様のお心を、射止めましょう!」なんて言われたけれど、私にそのつもりは全くない。私に辺境伯爵家の当主妻など、務まるわけがないのよ。うん、そうよ。ろくに教育を受けていないのだから。
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